「あいつと付き合うなんて、許さない」



そのとき、一瞬であたしの周りが黒い影に包まれて。


青山くんの唇が、あたしの唇に重なっていた。



「……っ!」



それはすぐに離れて。


驚きに目を見張るあたしをジッと見つめると。



「今のは、謝らないから」



それだけ言い放ってスクッと立ち上がり、青山くんは鞄に乱暴に教科書をつめると、図書室を出て行った。



「…………」



今のは……一体、なんだったの……?


『悪い、つい』そう言ったこの間のキスは、朋美ちゃんに彼女だと言い切りたかったための咄嗟の行動だとして。


今のは……。


『謝らないから』


確信犯的行為。



……どういうこと?


両思いで良かったな、なんて言って。


つき合うのは許さない……?



どうしてっ……。

もうっ……なんでなんでこんな。


その気なんかないくせに、どうしてあたしの心をかき乱すの……。


あたしは放心状態のまま、しばらくそこから動けなかった。