「おい、無理すんなって」



先回りして靴に履きかえた青山くんが、そんなあたしに見かねたように声をかけてくるけど。


やめてよ。

青山くんと一緒にいると、もっと具合が悪くなる気がするんだから。


昨日に続いて、また朋美ちゃんと別れたい口実として、あたしは利用された。


キス、なんていう最悪な方法で。



「……ゴホッ……ゴホゴホッ……」



考えれば考える程、具合が悪くなってくる。


悔しくて、涙まで滲んでくる。



「おい、マジで具合悪いんだろ?」



滲む涙を、具合が悪いせいだと勘違いする青山くんは、肩に手を乗せてあたしを覗き込んでくる。


こうやって、時折添えられる腕に煩わしさを感じながら、あたしはただひたすらに駅を目指して歩いていく。