お菓子の城



「これ全部、菓子か?」

だから見に来たんじゃないの、いつもならそんな嘲り笑いが聞こえてくるが__。

「みたい。凄いね」

今日の私は、なぜか優しい。

どうしてだろう?

お菓子が好きだし、私自身、お菓子博に来たかった。でも1人ではなんだか気が進まなかったのも事実。

まさか__一緒に来たからとか?

いやそんな馬鹿な。

一蹴してやる。

そんな馬鹿なことはない。子供みたいにはしゃぐ父親と出かけたからだなんて__私はそんな柔らかくない。

私はあの人が大嫌いだから。

吐く息が、立てる音が、存在が、母を苦しめたあの人が、大嫌いだから。

「おい‼︎これ、賞とったやつ‼︎」

私を呼ぶ、大きな声も嫌い。

聞こえないフリをしてるのに、何度も何度も呼びつける「絶対」も嫌い。

そしてそれに逆らえない私も、もっと嫌い。

これ見よがしにガラスケースの前で待ち構えている。

「見事やの」

それは、城だった。

お菓子でできた、お城。