黒い闇に包まれていくように戒哲が禍々しく染まっていく。


逃げようと思っても、なぜか体に力は入ってくれない。


腰を抜かしたかのように地面に座り込んでしまう体は、もう自分の意思では動かせそうもない。


座り込んだ私を哀れに思うような目で見つめる戒哲は、大きく大鎌を振り上げた。



「私を殺そうっていうの?」



痛みのおかげで頭はきちんとこの事実を受け止めていた。


これから私の身に降りかかるものは、痛みなのかそれともただの死なのか。


分からないけれど、怖さよりも戒哲の泣き叫ぶようなそんな感情が伝わってきて戒哲から目を離すことができない。



「……悪く思うなよ」



魂が抜けたようなその声と共に弧を描くように大きく大鎌が振り下ろされた。


伊鞠くん……ごめんね。


私あなたを家に帰すことも出来ずに、ここで終わるみたい。


諦めたくなかったけど、もう逃げれない所まできちゃった。


ぎゅっと目を閉じて覚悟を決めるしか今の私にはできない。