――戒哲は本気だ。
この体が動けないようにしてまで、私を持ち帰りたいんだ。
滲む血を止めようと肩を押さえるけど、傷は浅くとも電気のように傷口が傷んだ。
……一体どうしたらいいの
この力を使えるのは、私だけのはず。
私が体を動かせないとなれば、その力だって自然と消えてしまう気がする。
よく分からない力の真実を、戒哲の方が知っていることが悔しい。
「あんたのことは気に入ってる。でも、あんたよりも大切なものが俺にはある」
「戒哲……?」
「そのためにこの手を汚したって構わない」
そう言う戒哲の瞳に黒い影が宿る。
黒い霧が体を纏い、邪悪さが増していく。
大鎌に絡みつくように黒いドロドロとしたものが、溢れ出してきた。
ケケケケと怪しく鳴く鳥が、戒哲に何かを送り込むように宙を踊る。



