聞いた所で答えは返ってこない。


分かってはいるけど、逃げ出す方法を考えるための時間がほしい。


そうとなれば、何度でも聞いてやる。


「生憎だが、小娘さん。無駄なお喋りをして時間を稼ごうっていう手を使っても俺からは逃げられない」


「どうして。私にだってチャンスはあるはずよ」


「そういう自信嫌いじゃないけどな。でも、無理な話は無理な話だ」



睨み合ったまま、戒哲は大鎌を構える。


まずい、あれは一気に距離を縮めてくるやつだ。


動かない体に鞭を入れて体の向きを変えようとしたけれど、圧倒的な力の差を見せつけられる。


さっきまであの場所にいたっていうのに、一呼吸するよりも早く戒哲が目の前に迫ってきた。


振り下ろされた大鎌の先が、肩をかすった。


滲む血の鉄の匂いが鼻に届き、顔を歪ます。


痛みがじんじんと後から押し寄せてくる。