「やった!」
思わず声を出して喜び、伊鞠くんを抱きしめた。
竹林を抜けてたどり着いた場所は、山々に囲まれた小さな街が遠くに見える小高い丘の上だった。
石畳の塀を降りればあとはちょっとした森を抜ければ、街へたどり着く。
ここから街までは歩いて……2時間ぐらいはかかるかな。
でもあそこに行けば、帰る手段が一つでもあるかもしれない。
「よし」
伊鞠くんをそっと制服と下着の間から顔を出すように入れる。
ここから先は両手が空いてないと降りれない。
本人が起きてたら、赤面してやめろ!と拒絶されそうだけど今はそんなこともないし、堂々と入れちゃう。
空いた腕をぐるぐると回して準備を整えてから、石畳の塀をゆっくりと降りていく。
昔から木登りとかしてたおかげで、高い所はあまり恐怖を感じない。
するすると降りていき、地面に足が着いた。



