さっきまであった体の痛みはどこかへ消えて、背中に羽が生えたように体が軽い。
不思議と力が湧き出てくるような、そんな感じに顔が引き締まっていく。
後ろを振り返ることもなく、続いている竹林の奥へと進んでいく。
進むこの道は間違っていないと、竹達がその身を揺らして教えてくれるようだった。
「伊鞠くん、あともう少しかもしれない。だから頑張って」
声をかけると顔をすり寄せてくる伊鞠くんに、小さく笑う。
普段あれだけ強気なのに、こう甘えられると照れちゃうな。
スマホあったらこの可愛らしい狐姿撮りたいくらい。
見つかったら怒られそうだけど。
でも、これは撮らない方が損。
スマホを持ってこなかった自分を恨みつつ、掻き分けるようにして前へと進んでいくと視界が開けた。



