ああ……これだ。
この感じ、前にもどこかで……
思い出せない記憶の中で、頭に響く声に体に熱が帯びる。
『咲き誇れ!!!白憐の血よ!!!!』
全身に流れた電流が火花が散るように咲き乱れては、鮮やかな色を色づけていく。
バチバチと音を立てた雷と共に、私の周りを駆け巡る龍はどんどんと上へ上へと上昇していく。
ドクンと大きく鼓動が跳ねた次の瞬間、龍が大きく咆吼(ほうこう)する。
はっと思って天を仰げば、青空に吸い込まれていくように龍の姿が消えていく。
竹林に空いたこの空間が、今まで起こっていたことが現実だったということを感じさせる。
「待って!!!」
天に向かって手を伸ばすけれど、その手を宙を泳ぐだけで何も掴めはしない。
それでも知りたかった。
あの龍を私は……知っている。
そんな気がしてならなかった。
ゆっくりと降りてくる伊鞠くんを受け止めて、もう一度見上げるけれどさっきみたいな青空はもうどこにも広がっていない。
淀んだ空が、私を逃がそうとしない。
それでもさっきまでのあの不安はもうどこにもない。
開いた手を見つめて、その手をきつく握る。



