すると突風が竹林を通り抜けていく。


耳を塞ぎたくなるようなその轟音に、体を震わせながら縮まるようにして伊鞠くんを抱きしめた。


唐突なことに頭はついてこれない。


ひたすら風が止むのを待つしかできなかった。


シャララ、といつの日か聞いた鈴の音が聞こえてくる。


強い風の吹く中で、細目になりながらも目を開けた。



「あ……」



思わず漏れた声と共に、風がピタリと止んだ。


風に踊らされていたボサボサの髪を、片手で退かす。


先程まで広がっていた竹林はどこかへ消え、ポッカリと空いたこの空間を日差しが、そっと降り注いでは照らしてくる。


伊鞠くんを抱き抱えていたことを忘れそうになるくらいに、体に力が入らない。


いや、入らないというよりも吸い込まれているんだ。


神々しい空気に変わってしまったこの場所で、息をするのも忘れてしまうくらいに目の前の光景を眺めていた。