帰りたい気持ちはこんなにもあるというのに、なんで帰り道はどこにもないんだろう。


一体私がなんだっていうのよ。


私の中にあるというその力は、どのタイミングにおいても私を助けるようなことはしてくれない。


それどころか最悪の方向へと進んでいくばかり。


初めて嘉さんと一緒に戦いに行った時には、自分じゃない何かの力が体から溢れ出してきて……嘉さんに力を貸すことが出来たのに。


あれはまぐれだったのかな。


それとも嘉さんがいないと力が使えないの?


力を使えとみんなから言われるのに、自分じゃどうにもできない。



――ただの無力で足でまとい。



それでもどうにかしたいと思うこの気持ちは一体何なんだろう。


「舞い降りし泡沫の白き華、咲けりけり。今宵、月夜の風に舞い、己の命そこにあり」


頭に浮かんだ古い言葉をぽつりと紡ぐように口から吐き出したのは、私の意思じゃない。


ふつふつと暑い熱が体の中心から溢れ出てくるようなそんな感覚に、ぎゅっと目を閉じた。