距離を取ろうとする妖に、逃がすものかと嘉さんは切りかかる。


こんな狭い場所じゃあの鳥の妖の方が不利に決まってる。


この勝負は大丈夫だ――勝てる。


羽織りを翻して、もう一度同じように切りかかると片方の羽がバラバラになって崩れた。


大きな声で鳴く妖に嘉さんは容赦なく攻撃を仕掛けた。


額を真っ二つに切り裂くと、妖の動きがピタリと止まり、そのまま音もなく崩れて消えた。


呆気ない戦いに、身を構えていると嘉さんは崩れた妖の中から何やら一枚の紙を取り出した。



「嘉さん、それは?」


「……どうやら、視察だったみたいだなこいつは」


「倒したんじゃないんですか?」


「こいつはただの式神だ。親玉は他にいる。……ひとまず出直すぞ」



嘉さんが倒した妖に触れると、光の粒となってそのまま体に取り込まれていく。


それと同時に私のお腹の虫も動き出した。


呆れた目で見られていることに気づいて、頬を掻く。



「まったく……」


「晩御飯の材料買いに行ってもいいですか?」


「好きにしろ」



ため息混じりにそう言われたけど、ほんの少し嘉さんの尻尾が横に揺れていた。