「帰ってきた、の?」



そう呟いても返ってくる言葉はない。


駄菓子屋の細い路地裏を覗くけど、あの時みた白い桔梗の花はどこにもない。


学校帰りのあの道で、駄菓子屋の下で一人今まで持ってなかった鞄を担いでそこにただ立ったまま。


とっくにもう雨は上がって、風と共に残った雨の香りを運んでくる。


もしかしたら、全て夢だったのかな。


今までここで居眠りをしていたのかな。


どことなく腑に落ちないこの感じに首を傾げながら、空を見上げる。


すると、鞄の中から聞きなれたスマホの着信音が聞こえてくる。



「もしもし?」



スマホを手に取ってその場から歩き出す。