あそこへ行けばなにかわかるかもしれない。


そう思って。


生徒の姿がなくなった化学室に足を踏み入れる。


窓は閉められていて、周囲も変わった様子はない。


「テンちゃん」


あたしは誰もいない空間に声をかけて見た。


けれど返事はない。


「テンちゃん教えてよ。テンちゃんがなにかしてくれたんでしょう?」


ここにテンちゃんがいるかもわからないけれど、これはテンちゃんが起こしてくれた奇跡だとしか思えなかった。


「ねぇ、テンちゃん返事をして!」


懸命に声をかけ続けた時だった。


教卓の方からカタンッと音がして振り向いた。


そこには誰の姿もない。


だけど、白いチョークが空中に浮いているのだ。