眠れぬ王子の恋する場所



そのため、依頼を受けた方には毎回、ホームページに記載していいかの確認をとっているのだけど、名前さえ伏せれば依頼内容はそのまま書いてくれて構わない……という人がほとんどだ。

ひとつの依頼を終えたら報告書を作ってもらい、それを私がホームページに掲載する。
入社以来、私の仕事のひとつだった。

「おはようございます」

パソコンが立ちあがったところで、吉井さんが入ってくる。

今日も眠そうな声に挨拶を返し、吉井さんにも昨日の仕事の報告書をお願いすると、少し嫌そうに口元を歪められた。

「どうかしました? 昨日も岡田さんと犬の散歩だったんですよね?」
「そうだけど……なんか、家に寄ってけってすごくしつこくて、断るのが大変だったから」

げんなりとしながら椅子に座った吉井さんに、社長がおもしろそうに声をかける。

「やっぱり岡田さん、吉井狙いだったか。なーんか、そんな感じしたんだよなぁ」
「ってことで、俺もう岡田さんと会いたくありません」

呑気に楽しんでいた社長が、吉井さんの言葉に目を見開く。

「はぁ?! いや、ダメだろ。仕事なんだから」
「俺の仕事は犬の散歩です。それ以外のことを強要されるならそれはもう仕事じゃない」
「だったら……ほら、あれだ。お茶するなら三十分いくらだとかそういう話にすればいいだろ。
家事代行なら普段からやってんだし、その延長料金としてとれば……」

「そんなこと言ったら、そのうち俺あの人に食われますよ。お茶なんてOKしちゃったらどんどんエスカレートしていって、百万払うから一晩過ごせとかなりますもん。
だいたいあれでしょ。色恋含まれちゃったら風営法が面倒くさいって社長よく言ってるじゃないですか」

吉井さんの言葉にギクリと心臓が跳ねたけど……私の場合はセーフだ。たぶん。
だってお金の支払いは受けてないんだから。

無償でお互いが合意ならなんの問題もない……はず。