電話番号は交換した。
石坂さんに『交換しましょー』と言われたし、私も同じ職場な以上、必要だと思ったから。
仕事のことでなにかあったら、かけることもあるうだろうし。
でも……このタイミングは偶然だろうか。
胸がドキドキと不穏な音を立てるのを感じながら、電話に出る。
耳に当てるとすぐに石坂さんの声が飛び出してきた。
『あ、やっと出たしー。佐和さん、まだ寝てたわけじゃないんでしょ? だったら無視してないで開けてくださいよ、玄関。さっきから何度もインターホン押してるのに』
私がこの部屋にいるってことを確信している石坂さんに、驚きなにも言えなくなっていると、石坂さんが電話の向こうで笑う。
『あ、とぼけたって無駄ですからね。佐和さんがこの部屋にいるってもうわかってますし。……誰から聞いたか、知りたいですか?』
ふふ、と意味ありげな笑みをこぼされ、黙る。
社長、吉井さん……とふたりの名前が浮かんだあと、そんなわけないと考え直す。でも……だったら、誰が……。
わからなくて頭のなかがグルグルとパニックになっていたとき、石坂さんがクスリと笑い、その答えを口にした。
『久遠さんから聞いた……なんて言ったら、ビックリしちゃいます?』
「――え」
頭のなかが、ぐちゃぐちゃになったまま停止し、真っ白になる。
無意識に落ちた声以降、言葉は続かずに……なにも考えられなかった。
だって……久遠さんがって……。
しばらく、無言状態が続いていたけれど、そのうちに石坂さんのクスクスという笑い声が聞こえてきてハッとする。
それから、電話を切り、玄関の鍵とドアを開けた。
電話じゃ埒があかない。
どうせ、私がここにいるのがバレているなら、隠れてコソコソしている必要もないハズだ。
そう思いドアを開けると、石坂さんはやれやれとでも言いたそうな顔をして電話を切りバッグに入れた。
大きく胸の開いた、薄い生地のワンピース姿の石坂さんがひとつため息を落とす。



