季龍side

自分の家を飛び出したのは3年前。

だけど、そのきっかけは7年前に既に起こっていた。

その話をする前に、関原組の話をしなきゃなんねぇ。

関原組は、世間一般的なヤクザのイメージでいい。…ただ、薬だけじゃなく、裏では人身売買とも繋がっていた。

儲けのためならなんでもやる。それが殺しだろうが、なんでもな。

親父はそんな組の仕事ばかりで、家族らしい会話をした記憶なんかねぇ。

俺と梨々香は母親に育てられた。組の中で唯一、よく笑う母親だった。そんな母親だったからだろうな。俺と梨々香がまともでいられたのは…。

―――

『きぃちゃん、りぃちゃんこっちおいで』

『ままぁ!』

『かあさん、ちゃんってつけないでよ!』

両手を広げた母親に抱きつく梨々香の後ろで、両手を腰に当てて怒る俺。

そんな俺に笑った母親は、ごめんごめんって言いながら俺の手を引っ張って梨々香と俺を抱き締める。

―――

父親と遊んだ記憶はほとんどねぇ。でも、その代わり母親との記憶は楽しさで溢れていて。

大好きだった。組の実情を知っていたはずなのに、それを俺たちには一切見せずに笑っていた母さんが、大好きで、大切だった。