「葉月さん、回ろ」

「コク」

注文が届き始めたらしい。

それを合図に動き出した麻夏くんと一緒に席を回る。季龍さんは相変わらず教室の隅で腕を組んで窓の外を見ていた。

そして、そんな季龍さんに熱い視線を向ける女子たち。最早季龍さん鑑賞会状態だ。

「あの、代金払っていただいてもいいですか?」

「時間ないんだから邪魔しないでよっ!」

「すみません」

ちょっと声かけただけで殺気の籠った視線が突き刺さる。思わずおののいた私に対して麻夏くんは淡々と受け答える。

どの席でも文句を言われながら代金を回収して行き、全部回収し終えると不意に無機質な音が響き渡る。

音の発信源はタイマーで、それを止めた華さんはにっこりと笑みを浮かべる。

「この会は終了です。ありがとうございました」

「っえぇ!」

「まだ食べてないのにぃ」

華さんの言葉に即座に反論する先輩が数名。そこには手付かずの料理が乗ったままだ。

まぁ、季龍さん見てて全然手つけてないんだから当たり前か…。