吹き抜けていく風が妙に冷たく感じて、ぎゅっと拳をきつく握り痛みで紛らわせる。


いつものウィリーの匂いがするっていうのに、何故か動悸が収まらない。


足が竦んで動けない。


状況を整理しようとしても頭がついてきてくれない。


それどころかどんどんと頭がぐちゃぐちゃになっていく。



「久々の魔界はどう?取っておきの場所を用意してあげたつもりだったんだけど」


『ああ、久々に血が騒いだ』


「ふん、よく言うよ。ギリギリの所で交わしてきただけだろ」


『リーシェがいなかったら一発力をブッ放ちたかったが、これ以上嫌われたくないのでな』


「紳士ぶってるつもり?……笑えねぇよ」



ウィリーとリックの会話があまりにも自然なのに、それが違和感でしかない。