それと同時に現れた真っ黒な大きな狼みたいな獣。
牙をむき出して私達を威嚇する。
そんなのにもお構いなしにウィリーはパチンと指を鳴らす。
『落ち着けお前ら。お前達の縄張りに踏み込むつもりはない』
そう言って何かを投げると、獣達は投げたものに群がった。
その一瞬を見計らってウィリーは私を抱き上げた。
「えっちょ!!」
思わず声を出して抜け出そうと考えたけど、狼達の鋭い目に自然と体が竦んだ。
そのままウィリーは自分の羽を大きく羽ばたかせると宙へと浮かび上がった。
そのままその川から離れるように上へ上へと速度を飛び上がる。
『まさかここまで読まれてるとはな』
風の音に負けないような力強いウィリーの声。
でもその声はどこか楽しそう。
「な、なにが!」
『あいつ魔界への入口をいじって、スガベア川に繋げやがった!やばい奴の縄張りだってのに!ったく、なかなかに血が騒ぐな……!!』
にぃっと笑って一気に真っ黒な空を突き抜けて行く。
ウィリーの頬に刻まれた紋様が生き物のように動き出す。



