一面に幸福のシンボルを刺繍し終わったのは、約束した七日目の、空が白みはじめる時間だった。
なんとか終わった安心感でうとうと舟を漕いでいると、聞き慣れたノックが聞こえ、慌てて扉に駆け寄る。
「いらっしゃいませ。わたくしの祈りを精一杯込めたつもりです」
「ありがとうございます」
説明する時間も惜しく渡すと、大事そうに抱えたルークさまは、「あの、アンジー」と言い淀んだ。
「お代なんておっしゃったらお恨み申し上げますわ」
「……でも、こんなに素晴らしいものをただいただくわけには」
「わたくしの祈りに値段をつけようとおっしゃるのですか」
「あなたの言い値で」
ぎゅうと口を引き結んだ。なんてことを言うのかと思った。
「……わたくしは、あなたさまのハンカチに刺繍をする誉れをいただきましたわ。ですから結構です」
「それは」
不自然に途切れた続きは、こちらがお願いしたのだから、だろうか。
強情な方ね。
「……ただいまを」
代案を言ったのに、うまく伝わらなかったらしい。ぽかんとしたままなので、仕方なく言い直す。
「わたくしの言い値でよろしいのでしたら、わたくしは、できる限り早く、ただいまを聞きたいです」
「え?」
「……わからない方ね。どうぞご無事にお帰りください、と申し上げております」
なんとか終わった安心感でうとうと舟を漕いでいると、聞き慣れたノックが聞こえ、慌てて扉に駆け寄る。
「いらっしゃいませ。わたくしの祈りを精一杯込めたつもりです」
「ありがとうございます」
説明する時間も惜しく渡すと、大事そうに抱えたルークさまは、「あの、アンジー」と言い淀んだ。
「お代なんておっしゃったらお恨み申し上げますわ」
「……でも、こんなに素晴らしいものをただいただくわけには」
「わたくしの祈りに値段をつけようとおっしゃるのですか」
「あなたの言い値で」
ぎゅうと口を引き結んだ。なんてことを言うのかと思った。
「……わたくしは、あなたさまのハンカチに刺繍をする誉れをいただきましたわ。ですから結構です」
「それは」
不自然に途切れた続きは、こちらがお願いしたのだから、だろうか。
強情な方ね。
「……ただいまを」
代案を言ったのに、うまく伝わらなかったらしい。ぽかんとしたままなので、仕方なく言い直す。
「わたくしの言い値でよろしいのでしたら、わたくしは、できる限り早く、ただいまを聞きたいです」
「え?」
「……わからない方ね。どうぞご無事にお帰りください、と申し上げております」


