あなたに呪いを差し上げましょう(短編)

「実は、私は事情があって、宴が終わるまで、きちんと最後までいなければいけません。しかしあの宴に戻りたくもありません」


さようでございますか、と気のない返事をした。実は、で始まることがいいことなわけがない。


「一人でいるのも寂しくて」

「さようでございますか」

「それに、ここは冷えますし」

「さようでございますか」


さっきからわたくし、さようでございますかばかり言っている。でも他に答えようがない。

そうですね、なんて言った日には、面倒ごとが勢いよく転がり込んできそうなんだもの。


「……ルークさま」


まだ言い募ろうとするのを遮って、ヴェール越しに目を見つめた。


「つまり、宴が終わるまでいられて、一人にはならなくて、夜風にさらされない場所をお探しなのですね?」

「ええ、まあ。その通りです」

「馬車はお持ちですか?」

「いいえ」

「ではわたくしの馬車にご一緒にどうぞ」

「……今、なんとおっしゃいましたか」

「わたくしの馬車にご一緒にどうぞ、と申し上げました」


呆けて立ち尽くしていたルークさまは、しばらくして瞬きをした。


「……私は自惚れてもよろしいですか」


かすれた確認に首を傾げる。