うずくまっていると階段を上って来る足音が聞こえてきて、あたしは顔を上げた。


涙はもう止まっている。


泣いたことで少し心が安定した事が、自分でもわかった。


「朝飯だ」


陽介君がそう言い、小皿にご飯とおかずを乗せてきてくれた。


正直食欲なんてなかった。


でも、食べておかないと更に弱ってしまう。


そうなればもう陽介君の思い通りになるだろう。


そう思うと、食べなければいけないという気持ちになった。


昨日トイレを失敗してしまったからら、雄介君はあたしを瓶の外に出して朝食を取らせた。


雄介君にジッと監視されながらの食事は味がわからないくらいの緊張状態だったけれど、瓶の外にいられることに関しては嬉しかった。


味はわからなくてもお味噌汁の暖かさが体に行きわたる時に、安堵のため息が漏れた。


人は温もりに包まれると安心できるようになっているようだ。


こんな状況でも。


「学校はまだ当分休校だ。向こうでは余震が続いていて、建物の倒壊もあるらしい」


雄介君がそう言ったので、あたしは顔を上げた。


本当だろうか?


電車で40分の場所と言っても、ここに来てから揺れなんて全然感じていない。


体感できない程度の揺れなのかもしれないけれど、余震についてのニュースは聞いたことがなかった。