ゼリーを両手に持ち、腕の筋力を鍛えたりもした。


このケースの中で虫と同様の生活を送りながらも、あたしは希望を捨ててはいなかったのだ。


学校が始まって一週間。


あたしがいない事は必ず話題に上がっているだろう。


地震で被害にあったと思われるかもしれないが、どこを探したってあたしは見つからないはずだ。


そうなると、きっとみんなは他の可能性を探し始めるはずだった。


自分から失踪したとか、事件に巻き込まれたとか。


そうなってくると捜索範囲はきっと広がってくる。


あたしがここにいると言う事も、誰かが気が付いていれる可能性が高くなっているのだ。


ケースの中を3周ほど歩いたあたしは大きく息を吐き出して座り込んだ。


歩くだけで大粒の汗がにじみ出てくる。


地震があった日から比べてみても、外の気温は随分と高くなってきているようだった。


本格的な夏がもうすぐ始まる。


夏休みに入れば、またあたしは陽介君との時間が増える事になる。


そうなるとどれほどひどい事が行われるかわからない。


そうなる前に。


夏休みに入る前には、どうにかしないといけない。


そう思うあたしの視界には、ベッドの下の引き出しがうつっていた。