家に帰ると、お母さんはアパートの前で私を待っていた。



「帰ってきてくれて、よかった……、」



迷子になった日と同じように。

飛び出したのは私なのに抱き締められるとお母さんの匂いがして、温かくてものすごく安心した。


謝る私の肩を抱いてくれた。

家の中は、ひまわりの浴衣が掛かったままで。



「お母さんに声をかけてくれた男の子は、秋十のことだったんだね……?」



お父さんの写真を見つめた私は、もう目を逸らしたりしない。


いつまでも逃げてちゃいけないから。



「よかった。やっと気づいてくれたね?」



涙声で呟くお母さんは私に教えてくれた。


秋十が、お父さんのお葬式で、ずっと棺の前を離れなかったこと。


声をかけてくれた秋十の名前を聞いて、すぐにお父さんの生徒だったと気づいたこと。



私を……写真で見て知ってると話してくれたことも。