暗黒王子と危ない夜


やっぱりこの人は、怖いくらい綺麗だ……。


「あの、ね。本多くん」

「うん?」

「さっきの男の人……どうなったの?」



気になっていたことをようやく口にしてみる。



「それ、知りたい?」

「う……ん」

「だいじょうぶ、生きてるよ」

「……、」


生きてるよ、って。

一瞬固まったあたしを見て、本多くんはふっと笑った。


「ごめんごめん、わざと不安を煽ること言った。ほんとに大丈夫、 相沢さんが思ってるほどひどくはしてない」


冗談っぽい言い方じゃ信用できない。
あたしは真面目に聞いてるのに。


ーーそのとき、ふと思い出した。

“暗黒王子”様。

学校の女子の間で、本多くんは密かにこう呼ばれていることを。


彼が極道の息子、というのは誰もが知っている有名な噂だけど、実際のところ、“普段”の本多くんと、極道というワードは、まったく結びつかない。


制服を着崩すこともなく、所作ひとつひとつに品があり、柔らかい雰囲気を纏う美青年。

クラスで中心的なグループに属しているわけでもないのに、誰よりも圧倒的な存在感を放っている。

そんな彼に憧れを抱いている人は男女問わず多く存在していて……。


──そう、ひとことで言えば、モテるのだ。
モテるのに、人が寄りつかない。

高嶺の花だからという理由はもちろんあるだろうけれど。

みんな無意識のうちに、素顔が見えない彼を、畏れているから、だ。


そんな人と、あたしは今、一緒にいるんだ……。

改めて実感して、何度目かわからない緊張に襲われた。