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「悪かったな」
市川さんが淹れてくれたミルクティーを一口すすっていたとき。
本多くんのいる部屋から戻ってきた三成が、隣に座るなりぼそっと呟いた。
謝罪の言葉……それは、何に対して?
あたしが顔を向ければ、気まずそうに目を逸らし、髪をくしゃりとかき上げる。
「さっきのはわざとだよ」
「わざ、と?」
「ああ言えば、七瀬はエナを選ぶってわかってた」
「………、そっか」
エナさんを選ぶとわかっていた、なんて。
それをわざわざあたしに言う必要はないんじゃないの、と、心が弱くなったせいか考えてしまう。
でも、正直者の三成は、隠しごとができない性分なんだと思う。
きっと、三成は本多くんとエナさんが結ばれてほしいって初めから思ってたんだ。
あたしに望みはないから潔く諦めろ。
つまり、そういうことだよね?
「やっぱり今の七瀬はお前といるべきじゃねぇと思った」
「……うん」
「うんって、お前……。そんなすんなり受け入れんな。俺はお前の気持ち知った上でやったんだぜ? もっと怒れよ」
自分から勝手に謝っておいて、もっと怒れだなんて、言ってることが滅茶苦茶すぎる。
謝ってほしいなんて思ってない。
怒っているわけでもない。
百歩譲って怒っているとすれば、それは三成が今、悪くもないのに余計な謝罪をしていることに対してだ。