暗黒王子と危ない夜


憎んでるなんてあるわけないと思う。憎んでる相手を助けようなんて思うわけがない。

黒蘭を出て行った今でも、気にかけているんだから、むしろ……ううん、絶対。


「本多くんは……エナさんのことが好きだよ」

「決めつけんな。あいつは言葉と行動がいつもぐちゃぐちゃなんだ。目的のためなら自分の感情だって簡単に捨てる奴だぜ。ほんとの気持ちなんて分かったもんじゃねーだろ」


「……そう、かな」

「そうだろ。てか、早く乗れ」



急かされて、後ろのシートに跨ろうと足を伸ばす。

大きい。高い。ちょっと足を開いたくらいじゃ、乗ることができない。



「何やってんだ。ほら、こっち」


腕を掴まれて、そのままぐいっと体ごと引き上げられた。

そのままストン、と落とされる。



「飛ばしたりはしねえけど、腰に手ぇ回しとけよ。いいか、ぜってー離すなよ。死ぬぞ」

「う、うん。……あの、三成くん、」

「三成」

「み、三成」

「まだ慣れねえのか。呼び方」



はあ、と呆れたため息。



「っごめん。心の中ではまだ、三成くんって呼んでるから……」

「んだそれ。心の中でも呼び捨てろ。次くん付けしたら殺すぞ」



その言葉と同時、激しい音を立ててバイクのエンジンがかかった。

もう、何を言っても聞こえないだろうと思い、口をつぐむ。


あたしがぎゅっと腰に手を回したのを合図に、三成くんの──三成の、バイクは走り出した。