暗黒王子と危ない夜


古びた外装からは想像もできない、きらびやかな空間ががそこにはあった。

小綺麗なキッチンに人影はなく、そのまま足を進めるとカウンターが見えた。


その中に男性がひとり。

こちらに気づき、にこやかに笑いかける。



「やあ、久しぶり。……ってほどでもないか。
七瀬君を迎えに来たんだろう」



慶一郎さんが一歩前に出た。



「裏口からすみません。七瀬がまた世話になったみたいで。すぐ連れて帰ります……あいつはどこに?」

「まあまあ、そんなに急がなくても。奥のテーブルにでも座ってゆっくりしていきなさい」



その人は慶一郎さんより、二回りくらい年上に見えた。

威厳のある顔立ちとは裏腹に、ゆっくりとした優しめの口調。


慶一郎さんも物腰柔らかい話し方をする人だけれど、奥深くに何かを秘めているような鋭さがある。

それに対して、カウンターに立つこの男性からは
怖さというものが全く感じられなかった。


この人も、黒蘭の関係者……?



「琉生君は久しぶりだね、どうぞ座って。
……それからお嬢さんは、初めましてかな」