放課後の薄暗い教室に、とつぜん着信音が響いた。

そのメロディーはどこか不穏な空気を纏いながら、静寂を丁寧に切り裂いていく。


窓側、前から4番目の席。

机の上でぼんやりと光るスマホを見つけて、あたしは、恐る恐る手を伸ばした

──その直後。



「それおれの。触んないで」


背中を突き抜けるような冷たい声に、心臓がドッと激しく跳ねあがった。


気配なんて──なかった。



「机に置き忘れてたのか。見つかってよかった」


あたしが伸ばしかけた手の先にある"ソレ"を掴んだ彼は小さく息を吐き。

次の瞬間、にこりと明るい笑顔を見せた。



「相沢さん、まだ残ってたんだ?」


声色が変わった……というよりは、いつもの声に、“ 戻った ” 。

その笑顔に似合う、穏やかで優しい響き。


今あたしの目に映っているのは間違いなく

──クラスメイトの、本多七瀬くんだ。