だけどそれは、気にとめてもどうしようもないことだ。

ふるりと首を横に振り、意識を切り替える。

ちひろの視線の先に僕も目を向けた。



「並んでいる駄菓子も、知らないものが増えたね」

「……うん」



駄菓子は昔からあって、今の時代に残っているように感じることもあるけど、実際はそうじゃない。

時代にあわせて少しずつ変化するし、新しい商品を出すこともある。



だから久しくここに来ていなかった僕たちが知らない駄菓子があったって、なにもおかしいことはない。

その代わりに昔好んでいたものが、店頭からなくなっていることも、仕方がないことだ。



「でも、ほら、これ。
ちひろ昔よく食べていたよね?」

「うん」

「せっかくだしちょっと買って行こう」



まるでおままごとのようなサイズの買いものかごを手にし、いくつかの駄菓子を放りこむ。

驚くほど安い値段に、必死で100円に収めようとしていた当時を眩しく感じた。



大人になることはいいことだけじゃないと知っているけど、それでも望んでしまう。

できることが増えて、自由にできることが羨ましい。



だけど、まだ中途半端な僕たちは親の事情に振り回されて、生きることは大変で。

とても不安定だ。



そうやって過ごしているうちに、いつしか今日のことも、今みたいに幼かったと思うんだろう。

それならどうか、はやく。今すぐに。

明日に、笑って迎えに来て欲しいよ。



だけどそれはできないから、せめて今日を幸せでいっぱいにするんだ。

2度とここに来られなくても鮮明に思い出せるような、そんな君の思い出に残るような、1日にしたい。