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2月29日の学校は午前中で終了した。


授業はなく、明日の卒業式の説明を聞くだけだった。


まだ早い時間に学校を出たあたしは玲子と2人で駅の近くにあるパンケーキ屋へと向かった。


駅構内にあるパンケーキ屋はカウンター席のみの小さな店だったけれど、地元の雑誌や新聞でも紹介されていてとても有名な店だった。


空腹を抱えて店内へ足を踏み入れるとシロップやバターのいい香りがお腹を刺激した。


「なに食べる?」


メニュー表を見ているとどれもおいしそうで迷ってしまうので、あたしはこのお店の商品を上から順番に食べていくと決めているのだ。


「今日はフルーツパンケーキにする」


イチゴやブルーベリーなどがふんだんに使われているパンケーキの写真に、ゴクリと唾を飲みこんだ。
そんなあたしを見て玲子はクスッと笑う。


「またここに来ようね」


注文を終えた玲子が不意にそう言って来た。


「え?」


「あたしと千里は同じ大学に進学するでしょ? だから、明日高校を卒業してもまたこうして一緒に食べに来ようね」


それはとても他愛のない約束だった。


それなのに玲子がすごく真剣な表情でそう言ってくるから、あたしは少しだけ胸の奥がギュッと締め付けられて「うん、もちろんだよ」と、返事をする声が掠れてしまったのだった。