「あの」

「はい」

「かおりさん」

「……はい」

「スーツもお好きですか」

「…………よくお似合いだなと思ってました」


駄目だ、もうそれ以外出てこなくてさっきと同じ形容になってしまった。

のでどういう意味かは即行バレた。


翻訳すると、見惚れるくらい超絶好きです、である。


尻すぼみな申告に、要さんが固まった。


「ええと、光栄です」

「トンデモナイデス」

「襟がある服が好きなの?」

「襟の有無よりはその、やっぱりフォーマルというか、上品というか……」

「なるほど……? うーん、今度一緒に服選んでくれない?」

「えっ」

「え、駄目?」

「駄目じゃないけれど、あの」


なんだか結構真剣な顔をしているので、一応恥ずかしさをおして口を開く。


「要さんはどんな服でも素敵にかっこいいから大丈夫。いつも見惚れてたよ。好きだな、かっこいいなって思ってたよ」


早口で言い募ると、今度こそ本当に撃沈した要さんの。


「…………だから、なんでそういうことを言うかな」


——俺も、好きだよ。


途切れてかすれた返事が、あまりに。あまりに、お砂糖を限界まで煮詰めたみたいな、噛みしめる余韻まで甘い甘さだったので。


「〜〜〜っ」


私も撃沈した。