「はい、なんでしょう」


瀧川さんが手元の紙袋を掲げる。


「こちら、頑張ってらっしゃる息抜きに」

「ありがとうございます……!」


小さい紙袋は美味しい和菓子のお店のものだ。


職場の方に渡す差し入れかなって思ってたんだけれど、私に持って来てくださったのか。


ええと、何かお礼、お礼を……! ああ、私も何かお菓子買っておけばよかった。


今は手元にご進物しかない。

これはお店としての対応であって、私のお礼にはなってくれない。


ええとええと、お昼休みに何か考えよう。


それでは十三時に、と言い置いた瀧川さんが扉を閉めてから、とっくに書き終わっていたのにお話してくださっていたことに気づいた。


……私の勘違いでなければ、かたりとペンを置いたのは仕事始めの話をしたときより前で、紙袋は初めから瀧川さんの手元で揺れていた。


もっと早く切り上げられたのに渡すタイミングを待ってくれたのかなって思うと、それだけで嬉しい。


今年もたくさんお話できたらいいなって願掛けは、早くも叶っている。