確かにメニューには、一番最初のページにクリスマス限定ケーキがあった。


何週間か前からきっと掲載していただろうけれど、今日で最後のメニューだもん、それは目立つところに載せるよねって思って、

でもひとりでケーキを頼んだら感じが悪いし、余計に寂しさが募りそうだしって、見ないふりをして。


私の好きな、フルーツがたくさんのったチョコレートケーキを思い出す。


「……いいん、ですか」


だって、それって、なんか。なんというか。


「もちろんです」


かすれた問いかけに、即答が返ってくる。


瀧川さんが店員さんに声をかけて、メニューをもう一度お願いしてくれた。


持ってきてもらったメニューのやっぱり一番最初のページにあったケーキを確認してから、それぞれコーヒーとケーキを追加で頼む。


「……ありがとうございます。嬉しいです」


うるさい心臓を、ぬるくなったお冷やで誤魔化した。


「いいえ、こちらこそありがとうございます。俺も、嬉しいです」


運ばれてきたケーキをそっと一口食べてみる。


普段一人で食べるものより格段に甘く、美味しく、幸せな味だった。


「美味しいですね」

「ね。美味しいですね」


コーヒーでは乾杯はできないけれど、ふたりで一緒に笑い合って食事をした。


素敵なクリスマスだ、と思った。