「コートをお預かりいたします」

「ありがとうございます、お願いします」


バッグを一度お願いして預けてから、脱いだコートを軽く畳んで差し出すと、ハンガーにかけて、マフラーと手袋もラックにかけてくれた。


かけたものを綺麗に整えてから、バッグと木彫りの小さなタグを渡される。


「お荷物をお持ちしますので、お帰りの際はこちらをお渡しください」

「はい」


番号で管理すると間違えなくていいよね。

ローマ数字でよくある六と九の見間違いを防ぐためにか、ギリシャ数字だった。


ええと、XIだから……十一番目ってことかな。


あ、でもそうしたらIXが九なんだから、見間違い対策じゃないよね。おしゃれのためだろうか。


タグが丸みを帯びた正三角形をしているのこそ、見間違い対策だろう。


上の頂点に開いたチェーンを上、底辺を下にして見れば、誰でも読み間違えない。


瀧川さんは何か、後で聞いてみようかな。


お客さんがまとまってくる時間ってあるものだから、番号を聞いても瀧川さんが何時に来たのかつまびらかにはならない。

話の種くらいにはなるんじゃないかなあ。


そんなことを考えながら預けていた荷物を受け取ると、別の店員さんが声をかけてくれた。