カサブランカが三輪、美しく彩るのを横目に見ながら、いつものようにお座席まで小倉たい焼きを運ぶと、瀧川さんが世間話をしてくれた。


「実は、家でたい焼きを焼く機械を買いまして」


ざっくりした名前は、分かりやすいようにって配慮だろう。


お家でも食べたいなんて、瀧川さん、本当にたい焼きがお好きなんだなあ。


「ああ、はい、ありますよね! 家庭用たい焼き器」

「何かコツってありますか? うまくできないんですよ」


商品は焼かないけれど、閉店後とか休日とかによくおやつを作るのにいじらせてもらっているから、形を崩さない程度には、一応私もたい焼きを焼ける。

そんな話を前にしたのだった。


ううん、と思い出しつつ、ゆっくり言う。


「そうですね、生地を一度に流し込みすぎないとか、弱火でじっくり焼くとかでしょうか。でもやっぱり、ある程度慣れが必要だと思います」


慣れてくると、ここにあんこを置くとはみ出すんだなとか、この縁からこのくらいまでだったら大丈夫だなとか、食べたときにあんこがぎっしり詰まっているようにするにはこのくらいとか、細かいところに目が行くようになる。


慣れと分析って大事。