「え? なに?」


ようやく頭からコーヒーがかけられた事に気が付いたのか、月乃が表情を歪めた。


髪の毛から茶色いしずくがポタポタと落ちて床に落ちていく。


「あれ? コーヒーじゃ髪の毛って染まらないんだねぇ?」


アンミが小首を傾げてそう言った。


「あはは! アンミちゃんウケルぅ!!」


百花が手を叩いて笑う。


光の家が火事になっていることなんて、もう誰も気にも止めていない様子だ。


「なんで……こんな……」


呆然としている月乃がアンミと百花を交互に見つめる。


月乃からすれば全く意味のわからない展開だろう。


自分はアンミのためにコーヒーを買って来ただけなのに、この仕打ちは一体なんなのだと、頭の中は大混乱しているはずだ。


そんな中あたしは理央と目配せをしてほほ笑みあった。


今回の件でイジメのターゲットが変わるかもしれない。


それはあたしがクラスカースト上位にまた一歩近づくということだ。


そうなれば更にサインを手に入れやすくなることは間違いない。


アンミがバカでよかった。


思わぬ棚ボタにあたしは笑いが止まらなかったのだった。