ようやく戻って来た夏は真っ白な顔をしていて、何度呼びかけても目を開けてくれなかった。


伝えたい事があるって言ってたくせに。


ここで待ってろって言ってたくせに。


本当に夏って自分勝手な人間だ。


思い出して、また涙が滲んできた。


あたしは手の甲で涙をぬぐい、スマホで時間を確認した。


あんな夢を見てしまったから随分と早い時間に目が覚めてしまった。


だけど今から二度寝なんてできそうにない。


死んでからもあたしの事を苦しめるなんて、本当に夏ってやつは我儘だ。


仕方なくベッドに座ろうとしたとき、バイク音が聞こえて来た。


新聞配達の音だ。


あたしは耳を澄ませてその音を聞く。


カタンッとポストに新聞が投函される音がきこえてきて、バイク音は遠ざかって行った。


どうせ眠れないんだし、新聞でも読んでみようか。


大抵のニュースはスマホで確認して終わらせてしまうけれど、今日は新聞を読んでみようという気になった。


文字を追いかける事で少しでも気分転換にもなるだろう。


そう思って部屋を出て階段を下りて行く。


階段を下りた正面に玄関が見えて来る。