だけど、考えてみれば約一か月間ほど『過去ポスト』はここにある。


移動する気配も今のところ見られない。


かと言ってネット上に『過去ポスト』を見つけた! なんていう書き込みがあるワケでもない。


あたしは首を傾げて『過去ポスト』を見つめた。


もしかしたら、手紙を投函した人の願いが叶うまではこの場にあるのかもしれない。


それなら、あたしの願いはもうすぐ叶うと言う事になる。


今日送った手紙で、夏はきっと海へ行くことを諦めてくれるだろう。


そうすれば、あたしの願いは叶うのだから。


「なくなっちゃうのかな……」


そっとポストに触れてみた。


思えばこうしてポストに触れる事も今までなかったっけ。


手触りも普通のポストとは違って、なんだか温かみがあるように感じられた。


「なーんてね。ポストの温度なんてどれも一緒だよね」


あたしは1人呟いて、笑った。


『過去ポスト』はもうなくなってしまうかもしれない。


その思いに少しだけ寂しい気持ちが胸をよぎったのだった。