「ねえ、彼、本当に綺麗な顔してるわね」

やっぱりそういうことか、と思う。

「かっこいいからすごく目を引いて、すぐに声かけさせてもらったのよ」

彼女は天音をじっと見つめながら言った。彼はさらに困ったような顔になる。

確かに天音はすごく目立つ容姿をしている。こうやって立ち話をしている間にも、通り過ぎる人たちがみんな振り向いて彼のことを見ているのが分かった。

でも、天音の表情を見ていると、そういう視線を受けて明らかに居心地悪そうにしているし、声をかけられたことにも困っているのが分かった。

どこかで断ってあげなきゃ、と思って口を開きかけたけれど、彼女がどんどん言葉を続けるので、なかなかきっかけがつかめなくてまごついてしまう。

「色白だし、目も髪も色素が薄いのね。目鼻立ちもはっきりして整ってるし、もしかして外国の血が入ってる? ハーフさんかな」

彼女がその言葉を口にした瞬間、天音の顔色が一気に変わった。

あ、これはよくない、と反射的に思った。

彼のこんな表情を見るのは初めてだった。きっと彼にとっては、触れられたくない部分なのだと、事情は何も分からないけれど直感した。

「あのっ!」

気がついたときには鋭く声を上げていた。三人が驚いたようにこちらを見る。

「あの……すみません、彼は、写真とか得意ではないので。申し訳ないですけど、お断りさせてください」

勇気を出して、きっぱりと断った。

でも、彼女たちは慣れた様子で笑い、「大丈夫、大丈夫」と受け流した。

「そんなに構えなくても、本当にちょっとパシャッと撮るだけだから。お時間はとらせないし、別にプロのモデルさんみたいにポーズ決めてってお願いするわけじゃないしね。ただそこに立ってカメラのほう見てくれるだけでいいのよ。ね、ちょっと撮らせて」

彼女は、天音が断るとは微塵も思っていないようだった。