私が一人で階段を駆け上がっていくと、60階の階段の踊り場に机があり、その上に赤色の木刀が置いてあった。




〈 これって、何? 〉




私はその赤色の木刀の前で足を止め、階段の踊り場の壁に書いてある文字を読んだ。




『護身用の赤い木刀。

この木刀で、ゾンビを振り払え』




〈 この赤い木刀でゾンビと戦えっていうの? 〉




私は死神先生との戦いで、ケガをした手で、赤い木刀を持ってみた。




私が手にした木刀は、少し重くて、冷たくて、固かった。




〈 私だって、一応、乙女よ。

それなのに、木刀でゾンビと戦うなんて……。

ドリーム社は悪趣味よ。

いったい、どんな映像を撮りたいの? 〉




私は不満を抱えながら、その赤い木刀を握りしめ、構えてみた。




私は気が強くても、普通の女の子と同じくらい非力だ。




だけど、全力で木刀を振り下ろしたら、私でもゾンビの脳を破壊できるかなぁ?




私は一人でも、ゾンビと戦えるかなぁ?




『センタービル55階からゾンビが大量発生しました。

プレイヤーは逃げて下さい。

センタービル55階からゾンビが大量発生しました。

プレイヤーは逃げて下さい』




ビル内に響く無機質な声の放送を聞いて、私はドキリとして階段の下を覗き込んだ。




すると、5フロアー下の階でゾンビたちがうごめき、上の階を目指して階段を上り始めていた。