『センタービル27階にゾンビが大量発生しました。

プレイヤーは逃げて下さい』




『センタービル28階にゾンビが大量発生しました。

プレイヤーは逃げて下さい』




階段を駆け上がり続ける私たちを急かすように、相変わらず、ビルの中では無機質な声の放送が流れていた。




私は呼吸が苦しくて、足の筋肉もパンパンだったけど、走るのを止めようとは少しも思わなかった。




〈 この『ゾンビ街』でたくさんの人が犠牲になった。

みんな、こんな場所にさえ来なければ、自分の未来を失わずに済んだのに…… 〉




私の脳裏に、ゾンビの群れに囲まれて、悲鳴を上げながら、体をかじられているプレイヤーの姿が浮かんだ。




〈 今、どんなに苦しくても、私は『ゾンビ街』の犠牲者よりは、ずっとマシよ。

私はまだ、未来を手放していない。

私にはまだ、リアルな世界に帰れるチャンスがある 〉




私が必死に階段を駆け上がりながら、階段の上の方に目をやると、私の目の前の階段がついに行き止まりを迎えて、私の心臓がドクンと跳ねた。