「蒼太、凛子、オレはこの『ゾンビ街』で、初めて絶望を知ったよ」




海斗はそう言って、体を揺らしながら、ゆっくりと階段を下りてきた。




「ゾンビになって、オレは初めて知った。

未来が暗闇に閉ざされた世界を。

絶望だけが自分を取り巻いている世界を」




眼球を失った海斗の眼窩の闇が、果てしなく深く思えて、私は怖かった。




「蒼太、凛子、オレを一人にしないでくれ。

オレたちは仲間だろ?

ずっとずっと、これからも仲間だろ?」




「凛子、海斗はもうオレたちが知ってる海斗じゃない。

残念だけど、海斗はオレたちのミッションクリアを阻むゾンビだ」




「ゾンビになるとさ、いつも乾きに苦しむんだ。

それも悶えるような酷い乾きに……」




「海斗、止めて……。

もうそれ以上、聞きたくないよ……」




「だけど、この乾きを癒す方法がオレには本能的にわかるんだ。

それは新鮮な人間の肉を食べることさ。

それがオレの乾きを癒す唯一の方法なんだ」




そう言って、ヨダレを垂らしながら近づいてくる海斗の姿は、まるで悪夢そのものだった。




「オレたちは仲間だから、蒼太と凛子は、オレの苦しみをわかってくれるよな」




海斗はそう言って、ニヤリと笑うと、私たちに襲いかかってきた。




「新鮮な肉を食わせろ!」