｢食わせろ！｣




麻美が瑞穂の顔をのぞき込んだとき、瑞穂が不気味なうめき声を上げて、麻美に目を向けた。




麻美は、優しかった瑞穂の目が、急に憎しみを帯びた敵意ある目に変わったことに驚き、
右手に持っていた解毒剤の瓶を思わず落とした。




そして、解毒剤の瓶が床に落ちた衝撃で、解毒剤の瓶はパリンと音を立てて割れ、
床の上に解毒剤の青い液体が広がった。




｢ねぇ、瑞穂。

冗談でしょ……｣




麻美は震える声でそう言って、瑞穂から距離を取り始めた。




｢食わせろ！｣




瑞穂はそう言うと、よだれを垂れ流しながら、前傾姿勢で麻美に迫ってきた。




麻美は震える足で、後ずさりしながら、信じたくない現実をハッキリと理解していた。




〈 瑞穂が発症してしまった。

今の瑞穂は、あのおぞましいゾンビよ 〉