私たちは、いつの間にか来たこともない木造の家に集められて、椅子の上に座っていた。




きっと私たちは、この『ゾンビ街』の世界で、瞬間移動をしたんだと私は思った。




ミッション1をクリアすれば、この木造の家に全員が移動する設定に『ゾンビ街』というソフトは作られていているのだろう。




「皆さん、ミッション1クリアおめでとう」




そう言って、三十代と思われる一人の女性が、私たちの前に現れた。




その女性は小柄で、髪が長く、とても優しい顔をしていた。




「私の名前は、長野美紗。

この家の主です。

この木造の家は、『ゾンビ街』のちょうど中心にあって、
この家の半径三百メートル以内にゾンビは入ってこれない設定になっています。

今日は、私が皆さんのために、ご馳走を用意しました」




美紗がそう言うと、さっきまで何もなかったテーブルの上に、突然、豪華な料理が現れた。




「この料理を食べて、皆さんは今夜の疲れを癒して下さい」




「スゲーご馳走だぜ!」




海斗は目の前に現れた料理を見て、うれしそうに声を上げた。




「本当においしそう。

いい匂いがするよ」




「男子二人は本当に単純ね。

こんなのって、結局、ドリーム社が作り出した夢じゃない。

そんなによろこばないでよ!」




「たしかに夢かもしれないけど、こんな豪華な料理を楽しまない手はないよ」




「私もうれしいな。

こんな豪華な料理」




「本当に麻美まで」




私がそう言ったとき、海斗は待ちきれずに、目の前にある厚切りの肉にかぶりついた。