「私の名前は、早乙女凛子。

『ゾンビ街』のプレイヤーよ」




「やっぱりそうか。

それじゃ、あんたには、これの意味がわかるよな」




竜也はそう言って、私に右手を見せた。




竜也の右手には歯形が残り、噛まれた部分の肉がそげ落ちていた。




そしてその傷口からは、たくさんの血が流れ、竜也の制服を赤く染めていた。




「その傷口って……」




私はそう言って、ドキドキしながら、竜也の顔を見ていた。




そして、無表情な竜也の顔を見ていると、私はなぜだか恐ろしくなり、無意識のうちにカタカタと震えていた。




「あんたにならわかるだろ?

オレ、ゾンビに噛まれたんだ。

きっとオレは、ウイルスをもらったよ。

オレはゲームオーバーだ。

もう少ししたら、オレは醜いゾンビになるんだ」




この『ゾンビ街』の世界で、一番恐ろしいことは、ウイルスをもらい、ゾンビになってしまうことだ。




私は竜也の絶望の意味を知った。




竜也はきっと、もう手遅れだ。