生暖かな風が吹いてきてあたしの前髪を揺らす。


もしかした雨になるかもしれない。


試合が終わるまで持てばいいけれど……。


サッカー場に到着すると、グラウンドにはすでに選手たちが出てきていた。


軽いウォーミングアップをしている。


あたしは関係者の席にいる大雅の両親を見つけて歩調を早めた。


「おはようございます」


そう声をかけると、優しい笑顔があたしを迎えてくれた。


「心ちゃんおはよう。いつも大雅のためにお弁当を作ってくれて悪いね」


「いいえ」


あたしは照れ笑いを浮かべながらお父さんの隣に座った。


「心! あたしも来たよ!」


そんな声が聞こえてきて振り返ると、一般席から紀子が手を振っているのが見えた。


「紀子!?」


あたしは驚いて目を見開く。


「えへへ。今日って大切な試合なんだよね? あたしも気になっちゃった」


そう言い、ペロッと舌を出す。