どう見ても手作りクッキーだ。


「なにあれ」


あたしは怪訝に思ってそう呟いた。


「楓先輩、今日も熱心に大雅君のおっかけしてるよね」


登校してきた愛が呆れたような口調でそう言った。


その言葉にあたしはまばたきを繰り返す。


「楓先輩が大雅のおっかけ?」


そんな話は聞いたことがない。


楓先輩は琉斗のファンだったはずだ。


「そうだよ。毎日来てるじゃん」


紀子がそう返事をする。


「毎日? 楓先輩は琉斗のファンだったじゃん。琉斗が両足切断した時なんて、号泣でさぁ」


「なに言ってるの? 琉斗君ってサッカー部の補欠でしょ? そんな選手好きになるわけないじゃん」


あたしが最後まで言い終わる前に紀子がそう言っていた。


「え……?」


「両足切断は可愛そうだと思ったけど、本人はサッカーをやめるためのきっかけになったって言ってたらしいじゃん?」


紀子が話を続ける一方、あたしの思考回路は全然追いついていなかった。