「ここまで来といて今更聞くこと?」
注がれる流し目。
「……っ」
不覚にも、ドキッとするあたし。
「居るって言ったらどーすんの?」
耳元で出された低くて妖艶な声に、もっとドキドキする。
「えっと……帰ります……」
普通そうなるよね。
彼女がいたら、やっぱり悪いもん。
お互いそんな気はなくても、周りに誤解されてるだろうって時点でダメな気がする。
「計画性ないな」
あたしの答えに、水瀬くんはおでこをコツンと軽く弾くと。
「あ、見つけた」
返事を曖昧にしたまま足を止めた。
……はぐらかされた……?
それにしても、何を見つけたんだろう。
おでこに手を当てながら、見た先には。
「クレープ……?」
そこには可愛いインテリアが施されたクレープ屋のワゴンがあった。
周りには甘い匂いが漂っている。